『医学部受験小論文　出生前診断のメリット，デメリットについて』

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【問題文】

出生前診断のメリット，デメリットについてあなたの考えをまとめ，今後の出生前診断のあり方について１２００字程度で述べなさい。

【解答例】

出生前診断は，妊娠中に胎児(たいじ)の健康状態や遺伝的異常を調べる検査です。主な方法として，超音波検査や母体血清(けっせい)マーカー検査，羊水(ようすい)検査，絨(じゅう)毛(もう)検査などがあります。この診断には，親にとって生まれてくる子供の重要な情報が得られるメリットがある一方で，倫理的な問題や体へのリスクを伴うデメリットもあります。

まず，出生(しゅっしょう)前診断の最大の利点は，胎児の異常を早期に発見できることです。例えば、ダウン症候群(しょうこうぐん)や神経管閉鎖障害などの遺伝的障害が見つかった場合，病院側は早期から出産後の治療や援助の準備をすることができます。また，出産前に手術などによって治療できる疾患(しっかん)もあり，そのような疾患を出産前に治療することで合併症を減らすことで，子どもの健康の向上にもつながります。

さらに，子どもの両親も診断によって出産後の生活の計画を立てることができます。妊娠中の不安は多いですが，出生前診断によって胎児の健康を確認できれば，妊婦や家族の不安が軽減され，安心して出産に臨むことができます。反対に，異常が見つかった場合にも，出生前にその情報を得ることで、親は子供に必要なケアやサポートについて学び，育児に向けた準備をより適切に，具体的に行うことができます。

一方，出生前診断には倫理的な問題も存在します。特に，先天異常が発見された場合に中絶を選択することは，生命の選別につながり，生命の尊厳に関する深刻な議論を引き起こします。また，このことは障害を持つ人々への偏見や差別を助長する可能性もあります。

また，出生前診断の診断結果は100%確実ではないということにも注意が必要です。例えば，偽陽性(ぎようせい)の結果が出た場合，実際には健康な胎児が障害を持っていると誤解され，中絶を検討することになるかもしれません。反対に，実際には障害を持っているにもかかわらず，偽陰性の結果によって異常が見逃されることもあり得ます。

さらに，羊水検査や絨(じゅう)毛(もう)検査のような侵襲(しんしゅう)的(てき)な診断方法には，母体や胎児に対して体に悪影響を及ぼすリスクがあります。これらの方法は，流産(りゅうざん)のリスクを増加させるため，診断を受けるかどうか慎重に判断することが必要です。そのため，診断を受ける前には，親が十分に情報提供を受け，診断を受けることによる利点と危険性を理解しておくことが重要です。

以上のように，出生(しゅっしょう)前診断には子供を安全に迎えられるというメリットがある一方で，中絶を選ぶことによって生命の選別や差別につながる可能性があるという倫理的な問題や，体への負担がかかるという問題点もあります。そのため，出生前診断は妊娠，出産に関わる女性の自己決定権を十分に尊重しつつ，安易な生命の選択の助長につながらないよう，慎重に進めて行く必要があります。

医学や医療技術の向上，障碍者(しょうがいしゃ)が健(けん)常者(じょうしゃ)と同程度のＱＯＬを保つことのできる社会を目指していくことで，出生前診断のデメリットは軽減され，母体と子供の健康や将来設計を支えるものになっていくでしょう。

(1207字)

【補足】QOLとは

QOLとは，Quality of Lifeの略称で，生活の質や人生の質を指し，物理的な健康だけでなく，心理的，社会的，精神的な側面を含む総合的な幸福感や満足度を評価する考え方です。

この考え方の背景には，不治の病にかかっている患者や意識のない患者に対して，人工呼吸器や点滴，栄養チューブなどを用いて過剰な延命や非人道的な延命治療を行ってきたことへの反省があります。

近年は，患者の望みに応じて，延命だけを重視するのではなく，患者の残りの人生を豊かに送る支援をするという方針が浸透してきています。

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